成年後見制度の問題点に関する記事。
■成年後見制度が危ない(上)任意後見の盲点 狙われる財産管理の空白期間(中日新聞2月20日) ■成年後見制度が危ない(下) 市民後見人(中日新聞2月27日) 「法定後見」と「任意後見」。
字面だけ見ると法定後見の方が効力があるように見えるが、それは大間違い。成年後見制度は昔の「禁治産・準禁治産」制度と違って、
本人意思の尊重を重視した制度なので任意後見の方が優先度は高いのだ。
任意後見契約が締結されているときに法定後見の開始申立てをしても、原則として受理されない(
任意後見契約に関する法律第10条)事になっているくらいだ。尚、任意後見についての問題点が記事中で指摘されているが、法定後見にも問題点はある。まずは法律の条文から読んでおいた方が良いと思う。
ちなみに任意後見契約についての定義は以下の通り。
任意後見契約に関する法律
【定義】
(第二条)委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいう。
さて、
記事にもあるように、
後見人の権限は極めて強い。
財産の管理は元より、各種の代理権や契約の取消権(本人意思以外)まで付与されている。介護契約・施設入所契約・医療契約の締結も可能だ。
しかし困ったことに、
成年後見人は手術などに対する医療侵襲行為への同意は出来ない。
患者本人の身体については、患者本人しか決められないのが大原則となっている。介護・医療の現場で一番のネックとなっている問題がこれだ。
成年後見制度は民法で規定された制度であって、後見人は
本人の法律行為を支援する立場。手術などの医療行為に関する同意は法律行為ではないため、判断能力がなくなった本人に代わり、後見人が同意することはできないと解釈されているのだ。
現状では、任意後見契約の際に手術や延命治療・ターミナルケアについての本人の考え方をできるだけ明らかにしてもらって、書面に残すという対応が最善だが、それが充分に機能しているようであればそもそもこんな問題は挙がらない。
本人は認知症、後見人に同意権はない、病院は同意が得られないから手術しない、という状況になった場合、必要な医療が受けられないという大問題が出てくる。実際の医療現場では止むを得ず同意なしに医師が手術に踏み切ったりするケースもあるのだ。いわば
制度の不備を現場に押し付ける結果となっている。
ターミナル時の医療方針にも影響する問題でもあるし介護・医療の現場にとっては他人事ではない。高齢化の進展により、こういった事例は増えてくるはずであり、制度の早急な改善は急務であると言える。早く何とかして欲しいものだ。
あと、これは余談だが。
介護施設にとって身近な医療行為といえば
インフルエンザなどの予防接種注射。
こちらの方も成年後見人はアウトなのかと思っていたが、
予防接種法の条文を読む限り、大丈夫なようだ。
予防接種法
(第八条二項)
第三条第一項に規定する予防接種であつて一類疾病に係るもの又は第六条第一項に規定する予防接種の対象者が十六歳未満の者又は成年被後見人であるときは、その保護者は、その者に定期の予防接種であつて一類疾病に係るもの又は臨時の予防接種を受けさせるため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
とか、思ってたら本年1月31日付けの読売新聞の記事を読むと
アウト、となっていた。インフルエンザは確かに二類疾病に該当するし、第六条に規定されているような「緊急性の高いもの」かと言われれば自信は無いのだけど。
もうちょっと
法の弾力的運用をおこなってもらえんもんかな。
そりゃ無いぜ。
ほんとにダメなのかな。
詳しい人いたら誰か教えて下さい。(とほほ)
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