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介護メインの福祉情報blog。たまに独り言。

施設・病院での「身体拘束」は違法か 

えーと、お久しぶりです。
今週は園内行事の準備や社外研修で忙しくて、ブログの更新がままならない状態が続いているのですが、ちょっと更新さぼってる間に気になるニュースが出てたので、今日はその件について書きます。

■身体拘束「違法」病院に賠償命令 名古屋高裁が逆転判決(読売新聞)

■病院の身体拘束違法〈判決の要旨〉(asahi.com)

ニュースや新聞でも紹介されてる話なので、もう皆さんご存知かと思います。新聞の情報だけじゃ詳細がわからないと思って裁判所のサイトを覗いてみたんだけど、早すぎてまだ載ってないみたいなので、とりあえずGMの所感などを。

以前にも身体拘束の件については今年2月の記事(「身体拘束ゼロ」を心から推進したい、という話)でちょっと触れたんだけれども、「身体拘束」っていうのはですね、基本的には異常な行為なんですよ。ここら辺を押さえとかないと話がおかしくなる。

施設や病院関係者、介護をおこなう家族の一部には、入所できる人を増やしたり、介護に係る負担を減らすために拘束を積極的、あるいは消極的に推奨する人々もいるのですが、GMとしてはこの立場に容易には賛同することはできません。拘束とはあくまで緊急避難として行われるべきものなのであって、日常的に不用意にすべきものではない。病院や施設での身体の拘束は、

「当該入所者又は他の入所者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」

に限って、例外的に許可されているのです。
だってね、考えてみてくださいよ。拘束されている人が施設や病院にいる高齢者や病人じゃなくて「女子高生」とかだったらどう思います?こりゃ犯罪だよ(笑)。極端な喩えかもしれんけど、要はそういうことなんですよ。法律的に考えなくても倫理的におかしいでしょ?

施設や病院で拘束されている人を見たことがない人もいるだろうから、もうちょっと具体的に話すと、例えば我々の身近で身体の拘束が許可されていそうな職業といえば警察ですよね。逮捕=拘束な訳ですが、あの警察でさえ、基本的には裁判所の許可を得て令状(逮捕状)をもらわなければ容疑者を拘束することはできません(これを"令状主義"と言います)。令状なしでも拘束できるのは現行犯逮捕や緊急逮捕の時くらいのものです(冤罪の問題やらもありますが、長くなるのでここでは扱いません。あと、緊急逮捕の合憲性にすら異論があるのですが、これも長くなるのでここでは触れません)。

それにしたって逮捕後はただちに令状の請求が必要ですし、警察単独で拘束できるのは48時間だけ。あの警察でさえ、身体拘束についてはこれほどシビアに取り扱ってるんですよ。病院や施設は言わずもがな、といったところです。

なぜそんな仕組みになっているのかというと、これは先に紹介した以前の記事でも触れているように、憲法がそれを否定しているからです。

人身の自由の保障が無ければ自由権そのものが存在し得ない(=民主国家として成り立たない)ので、いわゆる民主的な国家ではこの手の規定を設けるのが通例となっています。憲法とは、国家の組織や統治の基本原理・原則を定める根本規範です。この国の大原則なんです。他法を見るまでも無く、拘束は違法に決まってるんですよ。介護保険法やら基準やらを読むまでも無いのです。全ての法は憲法を基にして生まれてるんだもの。

この国に住む以上、それでも拘束を日常的に認めさせたいのなら憲法を改正するか、将軍様のいる国北の方にある国に移住でもしてもらわないといけない(笑)。移住すれば病人や認知症高齢者じゃなくても拘束されちゃうかもしれんけどね。GMはそんなのゴメンですが。憲法改正については色々な議論があるし、GMにも自分なりの考えはあるんだけど(極端に変えるのはまずいけど「不磨の大典」化することには反対)、少なくとも人身保護に関する条項を変えようとは思わんですね。だって、そんなことしたら国からどんな目に合わされるかわかったもんじゃないじゃないか。考え得る、最大の権利侵害者は国家なんだぞ?

・・・って、ちょっと話がズレたけれども、今回の裁判については、判決の本文を読んでいないので新聞記事に従って書くが、「旧厚生省令で明確な禁止規定がある介護施設だけではなく、医療機関であっても「同意を得ずに患者を拘束してその身体的自由を奪うことは原則として違法だ」としたことは、現行憲法の理念から見ればひどく当然というべきであって、取り立てて騒ぐ必要も無い。

ただし、今後、病院側が上訴するかどうかはわからないが、拘束によって病院が訴えられたという事実と、拘束に関する取り扱いについては病院も介護施設と同様の要件が必要と示されたことは、非常に注目すべきであり、今回の判例は今後の患者と病院を巡る裁判において大なる影響を持つものと解釈できるため、そういう意味においては重視すべきケースなんじゃないかな、と思う。

今後、懸念すべきは病院側が訴訟を恐れて、拘束が必要になりそうな患者の受け入れを拒否することなのだが、今回の裁判は緊急避難的な身体拘束を違法とした訳ではなく、争点になったのはその"必要性"なのであって、本当に拘束が必要な患者に対しては正しい手続きを踏んだ上で行えば(刑法的に言うなら「補充性の要件」を満たしていれば、ということになるか)違法とは認められないのであるから、安易な患者拒否は行うべきではなく、また、それを許してはならないような仕組みづくりを考えていかねばならないと思う。

しかし、そのためには看護師の増員を視野に入れて考えねばならず、苦しい経営を行っている病院にしてみれば難しい問題であり、これはこれで頭の痛いケースなんじゃないかな。


・・・とまぁ、以上がGMの考えです。
異論ある人もいるとは思うけどね。というか、異論ある方歓迎。よろしければコメント下さい。他の人の意見も聞いてみたいです。今週はちょっとコメント返すのが遅くなるかもしれませんが、そこんとこはご容赦のほどを。今日も今から一日かけて遠くまで研修受けに行かなきゃならんもんで(泣)。

ではー。


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